大阪高等裁判所 昭和60年(ラ)28号 決定 1985年3月06日
抗告人 株式会社海栄社
右代表者代表取締役 岡新
右代理人弁護士 岸本昌己
同 小林廣夫
同 前田貢
同 井関浩
主文
原決定を取消す。
本件を神戸地方裁判所に差戻す。
理由
一、本件抗告の趣旨及び理由は別紙のとおりである。
二、当裁判所の判断は、次に訂正・付加するほか、原決定理由説示と同一であるから、これを引用する。
1. 原決定一枚目表、一一、一二行目の「報告書(昭和五九年一〇月二二日及び同月二四日付)」を「各報告書」と、裏三行目の「現情」を「現状」と、四行目の「二」を「第二」と、九行目の「保有等の目的」を「譲受に伴なう融資を受ける便宜」と、一二行目の「よい)、」を「よい。)。」とそれぞれ改める。
2. 同二枚目表九、一〇行目の「については、次のとおりと考えられる。」を「は次のとおりである。」と改め、裏二行目の「後述のとおり」から末行の「しかも、」までを削除する。
3. 同三枚目表五行目の「、毎年」から七行目までを「計約一六億九〇〇〇万円の経常損失を生じた。」と、八行目の「そのうえ、」を「しかし、海栄社グループの経営が破綻をきたした直接の原因は次のとおりである。即ち、」と、裏三、四行目の「TMS」を「東京マリンサービス株式会社(以下「TMS」という。)」と、一〇行目の「至った。」を「至ったことによるものである。」とそれぞれ改める。
4. 同四枚目裏初行から七枚目裏四行目までを次のとおり改める。
「1 海栄社グループは、前記一2(二)のとおり、そのほとんどの船舶を東京海事及びTMSに定期傭船に出していたため、右両社の倒産の影響を真向から受けることになり、本件会社更生手続開始の申立をした時点において、その所属船舶一五隻のうち傭船に出していた船舶は、日本郵船傭船の竜神丸とジャパンライン傭船のさに―ねぴあの二隻にすぎなかった。
ところが、その後の保全管理人の努力等の結果、会社更生手続開始の決定がなされるか否か不明の不利な状況にもかかわらず、現在右二隻の他、びゃくだん丸、新興丸、あかしあの三隻が傭船を得て稼働中であり(なお、かつら丸、新和丸もその後稼働していたが、現在航海を終えて帰港している。)、さらに、後記2の船員問題が解決したこともあって、来島どっく株式会社(以下「来島どっく」という。)系列の北日本大井海運株式会社との間に、運航可能なすべての貨物船について定期傭船契約が成立する見込みである。
2 また、従来船員費が年間三〇億円にも達し、この点が海栄社グループ再建の大きな障害になっていたところ、現存船員三七三名のうちほとんどの者が加入する(船長は非組合員)全日本海員組合(以下「全日海」という。)及び船舶通信士労働組合(以下「全通労」という。)は、この間の事情に理解を示して会社再建のため組合員全員の一旦退職の意向を示したので、昭和六〇年二月七日保全管理人は、右両組合との間で、全組合員は同月一五日限り退職することとし、この退職に伴なう退職金等労働債権のうち八割については来島どっくは債権譲渡して同社から当該債権額面額の支払いを受け、残りの二割については今後の船舶運航・売却処分等の可能性を考えて船舶先取特権を行使しないこと、退職船員のうち二七〇名程度は、給与減額のうえ一年間の予定で期間再雇傭し、一隻につき二二名(但し、二隻については二三名)の超減量体制の貨物船一〇隻に乗船すること等の合意をした。その結果、船員の人件費は年間一七億円程度に節減できる見込である。
3 資金繰りについては、海栄社グループは、本件会社更生手続申立後においても、東邦相互銀行から昭和五九年八月一五日一億〇八七八万円、来島どっくから同年八月末に三億円、同年一〇月末に二億円、同年一二月一七日三六〇〇万円、同月一八日四〇〇〇万円の各融資を受けているところ、来島どっくからは今後も必要に応じ資金の融資を受けることができる見通しである。
4 来島どっく、第一生命保険相互会社、東邦相互銀行等を始めとする七五パーセント以上の担保債権者、神戸海運監理部、全日海と全通労の労働組合は、それぞれの立場から早期に海栄社グループについて会社更生手続が開始されることを希望している。
5 以上の事情によれば、海栄社グループの今後の事業収支は、累積債務の金利の減免などにより黒字計上も可能であると考えられ、また、来島どっく等の有力債権者や労働組合の積極的な支援も期待し得るから、海栄社グループは会社更生法三八条五号の更生の見込がないものと断定することはできないものというべきである。」
二、よって、更生の見込なしとして申立会社の本件会社更生手続開始の申立を棄却した原決定は失当であるから取消すべきところ、本件会社更生手続開始の申立を認容するときはさらに所定のその他の手続をする必要があるから、会社更生法八条、民訴法四一四条、三八九条を適用して、本件を神戸地方裁判所に差戻することとして、主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 仲西二郎 裁判官 長谷喜仁 下村浩蔵)
<以下省略>